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人生とは、永遠のβテストだ。


そんなわけで、聴講してきました。
第69回「社会を明るくする運動」うきは市青少年弁論大会」。

自己成長、自殺、国際交流、LGBTQ、進路、死別、家族、不法投棄、チームワーク、個性……
若い世代が、今を生きていく中で、何を感じ、何を思い、何を願うのか。
その片鱗に触れることが出来る、貴重な機会でした。

ひとつひとつの弁論にコメントしたい欲求に駆られますが、
「これが老害の一丁目……」と自覚したのでここは自制し、
声を上げて頂いた若き弁士たちの今後のご多幸を祈念するに留めます。

が。であれば、ここで筆を取る理由はなんなのか。

弁論の中に、
「これは若者のお気持ち表明だけで済ませて良い問題じゃないだろう」
と思う節があったのでした。

「免許、返納してくれないか」

その弁論のテーマが「高齢者の免許返納問題」。
12人の発表があったが、唯一明確に発表テーマに重複が発生したのがこの案件。

2019年春、高齢者ドライバーが起こした悲惨な交通事故が、世間を騒がせた。
そのため、非常にタイムリーな話題であり、聴衆の関心も高かったように思う。

「うきはは、高齢者が家族内に居る家庭が多いから、この話題には敏感だと思うよ」
たまたま会場でお会いして同席していた仕事仲間から、そんなことを教えて頂いた。

弁士の一人は、同居する曽祖父の免許返納を巡る家族内でのやり取りを話してくれた。
そのおじいさんは、「免許を返納してほしい」という家族の思いを受け止めてくれたという。
その後、自由に外出は出来なくなったが、その分、趣味の家庭菜園に今まで以上に精を出すようになった、と。

もう一人の弁士は、免許返納によって得られる「運転経歴証明書」について触れ、
免許返納者へ社会的なサポートはあるので、返納を検討してほしいと訴えた。

共通して、「運転に不安のある高齢者は免許を返納すべきだ」という主張であった。

「来年、免許を返そうと思うんだ」

所変わって、私が今、庭の手入れをしている実家の近所に、御歳86になる茶飲み仲間が居る。
茶飲み仲間と言っても、いつも一方的に珈琲やら野菜やらを頂いてばかりで、大変お世話になってます。

彼女も高齢者ドライバーの一人ではあるが、
「家族からは車での遠出は止められている」
「来年、免許更新があるが、更新はせずに返納しようと思っている」
と、少し残念そうに話してくれたことが何度かある。
ちなみに、このやりとりは件の事故が起こるよりもずっと前から。

彼女の家からは、スーパーもコンビニも病院も遠い。
これまで、車があることで繋がれていた交友関係もあると聞いている。
何より、車を運転しているときのことを、毎回楽しそうに話してくれる。
そんな彼女が免許を返納した先、多くの苦難が待ち構えているのは明らかだ。

車社会のこの町で、免許を返すということ

メインの産業が田畑と果樹園であるこの町で、
スーパーもコンビニも徒歩圏内で済んでいる私のようなケースは極めて稀だ。
仕事するにも、買い物に行くにも、人と会うのにも、車が必須の土地柄だ。
車を運転できることは、人権と言っても過言ではない。

一方で、「運転に不安のある高齢者は免許を返納すべきだ」という主張もわかる。
実際、人命に関わる。運転する側も、そのそばを歩く側も。

運転技能に不安のある場合、公道に出るべきではない。
しかし、一方的に免許返納を迫るのは、その人の何某かの権利を剥奪することに繋がりかねない。

世代間の対話が必要だ

話を、弁論大会の会場に戻そう。

今回は会の特性上、若者側が一方的に高齢者への免許返納を要請する構図にならざるを得なかった。
しかし、弁論を聞いていて、一言二言物申したかった当事者は多かったように思う。
「免許を返納してほしい」という申し出に、そう易々と「はいわかりました」とはならないことは、容易に想像がつく。

もし実現出来るとしたら、今回の弁論と、「免許返納に踏み切れない高齢ドライバー」の主張とをぶつけ合う場をセッティングしたい。
そのふたつの主張は、本当に相容れないものなのか。意見をぶつけ合ってほしい。
そうしたぶつかり合いの中から、社会課題解決に繋がるヒントが芽吹くかもしれない。

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もしかしたら、行政が取り組むべき問題なのかもしれない。
もしかしたら、社会福祉を担う何某かの団体に任せれば良い問題かもしれない。

しかし、当事者が声を上げられるのならば、声を上げた「その先」に思いを馳せてほしい。
「免許を返納してほしい」と願うものもまた、この町の当事者だ。
高齢化し切ったこの町でリアルに起きている問題の解決に動くことは、
この先この国で起こる諸問題の解決に、一石を投じるかもしれない。

そして私は、そう在りたいし、
そのように動ける仲間を、この地で増やしていきたいのだ。

執筆者プロフィール

KOBA / KOBA5884 / 小林佑輔

1987年生。青春時代及び社会人経験の初期を神奈川県で過した後、2018年5月、福岡県うきは市に移住。

システムエンジニアとして食い繋ぎつつ、そこで培ったスキルを地域貢献に活かせないか模索中。

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