## 自分を客観視するという試み
最近、興味深い分析レポートに出会いました。それは、300回以上にわたる音声ログの内容を分析し、発言の端々に見られる思考パターンや価値観の変遷から、本人すら明確に意識していない可能性のある深層心理の傾向を考察したものです。
音声ログという一方通行のコミュニケーションを通じて、自分自身の無意識の行動原理が浮き彫りになるというのは、なかなか興味深い話だと思います。このレポートから見えてきた3つの特徴的なパターンについて、今日は考えてみたいと思います。
## 1. 「役立つ」ことで自己存在を証明する
分析によると、行動の根底には「自分の存在が、他者や社会にとって具体的かつ測定可能な形で役立っているか」という問いが常に横たわっているということでした。これは単なる利他的な欲求以上に、自分自身の存在価値を確認するための根源的な動機になっているとのことです。
具体的には、ICT教育拠点の設立や地域活性化への関与、ブログ執筆などの活動が、すべて「他者やコミュニティへの価値提供」という形を取っているということです。「仕事が消化不良」「インプットとアウトプットが皆無だった」といった発言に強い自己嫌悪が見られるのも、アウトプット(他者への貢献)ができていない状態が、自己の存在価値を揺るがすためではないかという分析でした。
興味深いのは、「マイナスをゼロに持っていく仕事」にやりがいを感じにくいのは、それが「新たな価値を創造した」という実感に繋がりにくく、自身の貢献が可視化されにくいためだという指摘です。これは多くの人に当てはまる心理かもしれませんね。
## 2. コミュニケーションの矛盾した欲求
二つ目の特徴として挙げられていたのが、コミュニケーションにおけるパラドックスです。他者との繋がりを強く求めている一方で、双方向のコミュニケーション、特に意図が複雑に絡み合う雑談や交渉に対して、強い苦手意識と回避傾向があるということでした。
音声投稿という「一方通行」のコミュニケーションを300日以上も継続できたのは、相手の反応を気にせず、自分のペースで思考を言語化し、繋がりを「発信」できるという形式が、最も心理的安全性の高いコミュニケーションだったからだという分析は、なるほどと思いました。
会話において「聞き手」に徹し、相手に120%喋らせる役割を無意識に引き受けてしまうのも、「自分が何かを発言して相手を傷つけたり、あるいは自分が否定されて傷ついたりするリスク」を極限まで回避しようとする防衛機制の現れかもしれないということです。
営業が壊滅的にできないのも、「自分の価値を相手に評価される」という状況そのものへの強いストレスが根底にあるという指摘は、多くの人が共感できる部分があるのではないでしょうか。
## 3. システム思考による世界理解
三つ目の特徴として、物事を抽象化し、分類し、フレームワークに当てはめて理解しようとする「システム思考」が極めて強いということが挙げられていました。これは知的な強みであると同時に、弱点とも密接に関連しているという分析です。
DIKWピラミッドやOSI参照モデルと人格形成の類推、キャズム理論の応用など、複雑な事象を既存のモデルに当てはめて構造的に理解しようと試みる傾向があるということです。「頑張る」ではなく「仕組みで解決する」ことを重視するのも、再現性がなく属人的な精神論よりも、誰でも扱えるシステマティックな解決策を好む本質的なスタイルを反映しているという指摘は興味深いものでした。
「割り込み仕事」に強いストレスを感じるのは、構築した「今日の計画」というシステムが外部要因によって破壊されるためで、計画の崩壊は世界のコントロールを失う感覚に近いのかもしれないという分析も、なるほどと思う部分がありました。
## 自由を求めながら「意義ある檻」を築く
分析の結論として提示されていたのが、「会社員という不自由な檻から逃れ、自由な世界で生きることを選択した建築家」という表現でした。しかし、完全に自由な荒野では、何を作っていいかわからず、また他者との距離感がつかめずに不安になってしまう。
そのため、自ら「うきはICT研究所」や「教育理念」といった、自分がルールを決められる新たな「意義ある檻」を築こうとしているという分析は、非常に興味深いものでした。その檻の中では、安心して自分の能力を発揮し、コントロールされた形で世界と繋がることができるということです。
求めているのは完全な自由放任ではなく、「自分が納得できるルールと目的意識(システム)の中で、他者や社会に貢献していると実感しながら、創造性を発揮できる自由」なのではないかという結論は、多くの人にとって示唆に富むものだと思います。
## まとめ
音声ログという日常的な記録から、ここまで深い心理分析ができるというのは驚きでした。自分では意識していない行動パターンや価値観が、継続的な記録を通じて見えてくるというのは、セルフマネジメントの観点からも非常に価値のあることだと思います。
「役立つことによる自己存在の証明」「コミュニケーションの矛盾した欲求」「システム思考による世界理解」という3つのパターンは、程度の差はあれ、多くの人に当てはまる部分があるのではないでしょうか。自分自身を客観視する手段として、こうした分析の視点は参考になりそうですね。