母校の大学の、お世話になった先生から、以下のような依頼が舞い込んできました。
今年の学生の卒論で、システム開発・導入時のコミュニケーションに関わる成功・失敗事例やその要因について取材に協力してくれる方を探してます。昨日MTしたら意外と苦戦していて、OB・OGにお願いできないかと思って連絡しました。
二つ返事でOKした私でしたが、
直前になって、ある疑問というか、問題というか、
そういうところにぶち当たったのです。
インタビューの終了後、反省会的な場を設け、
ある指導をしました。
それについて語る前に、インタビューを受けるにあたって、
こちらが準備したことから時系列を追って書いてみようと思います。
* * *
学生さんから頂いた依頼状を読み返す。
以下、抜粋。
情報システムの開発、導入においては、多くの課題があると考えています。その中には技術的な原因だけでなく、人対人のコミュニケーション、また開発・導入を取り巻く環境が原因となり、問題が発生してしまうこともあると考えています。
今回の取材は企業内情報システムの事例について、そうしたコミュニケーション上の課題を発見するために行います。
具体的には、システム部と各部署の窓口担当者、実ユーザなどの関係者間の情報システムに関するコミュニケーションについての実態や、システム導入や刷新におけるトラブル事例・改善策・成功事例についてのエピソードをお聞かせ願いたく存じます。
さて、困った。
私は一介のシステムエンジニアではあるが、
お客さん(最終的なユーザ)とは密には連携を取ったことがない。
どういうことかというと。
インタビュー会場に、以下のような図を用意しておきました。
左の図が、仕事を請ける際の人間関係。
右の図が、よくあるシステム開発のプロセス。
私は、左図で言う所の
「元請・n次請の開発責任者〜開発者」
という立場であることが多いです。
右図のシステム開発のプロセスとしては、
「詳細設計〜プログラミング〜単体テスト」を実施することが多く、
「基本設計」から関わらせて頂くこともありますが、本当に稀です。
以上が、私のステータス。
これに対し、学生さんの側が、
・これらの図のどの辺りの話を聞きたいのか
・インタビュー対象である私が、これらの図のどこに位置するかを把握しているか
この2点が、インタビューを受けるまで不透明でした。
で、不安は的中します。
学生さんは、主に「要件定義〜基本設計」の部分での、
ディスコミュニケーション事例を知りたがっていた。
関係者図で言えば、より発注元に近い立場の人間に対し、
インタビューを取りたがっていた。
ここで慌てないのが俺流です。
インタビューを受ける日の午前中に、
上流工程(要件定義〜基本設計)に精通している、
弊社のベテランに対し、
「今日、学生がこういう事情でオフィスに来るので、話してもらえませんか」と、
社内アポを取っておきました。
同時に、私と同じ、下流工程(詳細設計〜開発〜単体テスト)のエンジニア(後輩)にも、
同様の依頼を投げておいたのです。
そしてインタビュー突入。
学生さんから改めてインタビュー趣旨を聞き、
「上流工程のエンジニアの話を聞きたい」という要望がわかるやいなや、
事前にアポを取っておいたベテランを会議室へ招集。
インタビューに応じてもらいました。
その後、下流工程のエンジニアにも、インタビューを受けてもらいました。
こちらの方が、彼らの欲しがっている、より「具体的な失敗事例」について、
私の方からも補足情報を出しやすかったためです。
* * *
さて、インタビューが無事に終了し、学生を交えての反省会。
「インタビューを受ける相手は適切な相手か?」は、事前にリサーチすべきだったかな、と。
リサーチというか、現場に赴くまでの密な交渉というか。
今回、私が根回しして、あらゆる開発工程の質問に答えられる体制を作っておきましたが、
我々インタビューを受ける側が何の対策もしていなかった場合、
学生からしてみれば、上流工程の話を聞きたかったのに、下流工程の話を延々とされ、
「データを取りたかったターゲットと違った……」なんて事故になりかねないところでした。
こちらとしては、せっかく川崎の弊社オフィスまで来て頂いたので、
ちゃんと収穫を得て、大学に持ち帰ってもらいたい。
そういう思いから、色々と根回しや白板の図の準備などをさせてもらいました。
自分も卒論の執筆で苦労した立場なので。
まぁ、元を辿れば、依頼状を頂いた時点で、内容をしっかり噛み砕き、
「あ、これ俺がインタビュー受けてもしょうがないな」と判断した上で、
断るなり、他にいい人を紹介するなり出来ればよかったのですが。
安請け合いはするもんじゃないね。まぁ楽しかったからいいけど。
* * *
こう考えると、何事も「準備が9割だなぁ」と。
事前の根回しやシミュレーション、場づくりによって、
何か成したいことに対する「打率」は上がっていく。
そういうことを、改めて肝に命じた一件でした。