AIコーディング時代の教育転換点:「何を作るか」が重要になった理由と課題

# AIコーディング時代の教育転換点:「何を作るか」が重要になった理由と課題

## プログラミング教育の転換点に立って

長年プログラミング学習をメインに据えた教育に携わってきましたが、最近大きな変化を感じています。vive codingをはじめとするAIコーディングツールの登場により、従来のコーディング学習の意義が薄れてきているのです。

これまでは「どうやってコードを書くか」「どの構文を使うか」といった技術的なスキルの習得に重点を置いてきました。しかし、AIが高品質なコードを瞬時に生成できる時代において、単純なコーディングスキルだけでは価値を提供できなくなってきています。

## 「何を作るか」に重点を置いた教育の必要性

この状況を受けて、教育の軸を「どう作るか」から「何を作るか」へと転換する必要性を強く感じています。つまり、技術的な実装方法よりも、何を解決したいのか、どんな価値を生み出したいのかという企画力や問題発見力こそが重要になってきているのです。

AIがコーディングを担当してくれるなら、人間は以下の能力により集中すべきでしょう:

– **問題発見力**:身の回りの課題を見つける力
– **企画力**:解決策をアイデアとして形にする力
– **設計力**:全体的な仕組みを考える力
– **コミュニケーション力**:AIに適切な指示を出し、他者と協働する力

## PBL(問題解決型学習)への着目と直面した壁

この方向転換を実現するため、PBL(Problem-Based Learning:問題解決型学習)に注目しました。実際の問題を起点として学習を進めるこの手法は、「何を作るか」を重視する新しい教育方針にぴったりだと考えたからです。

しかし、実際にPBLを導入しようとして大きな壁にぶつかりました。子どもたちに「何か困りごとない?」と質問しても、特に何もないという反応が返ってくるのです。

## 「困りごとがない」という困りごと

この状況は、ある意味で現代の子どもたちが置かれた環境を象徴しているのかもしれません。多くのことが既に便利になっており、身近な問題が見えにくくなっているのです。これは「困りごとがないこと自体が困りごと」という皮肉な状況を生み出しています。

PBLの理想は学習者自身が問題を発見し、それを解決する過程で学びを深めることです。しかし、問題意識を持つこと自体が困難な状況では、従来のPBLアプローチだけでは限界があることが明らかになりました。

## 教育者側の準備の重要性

この経験から、教育者側が制作のネタを豊富に持っておく必要があることを痛感しています。子どもたちが自発的に問題を見つけられない場合でも、学習を前に進められるような準備が必要なのです。

具体的には以下のような準備が考えられます:

– **身近な問題の事例集**:日常生活で遭遇する小さな不便さの収集
– **社会課題の入門版**:子どもたちにも理解しやすい形での社会問題の提示
– **創作のきっかけ**:「こんなものがあったら面白そう」という発想の種
– **段階的な問題発見の練習**:問題を見つける力そのものを育てるカリキュラム

## まとめ:新しい時代の教育設計

AIコーディング時代の到来は、プログラミング教育に根本的な変革を求めています。「どう作るか」から「何を作るか」への転換は避けて通れない道でしょう。

PBLは有効なアプローチですが、現代の子どもたちの環境を考慮すると、教育者側の十分な準備なしには機能しません。問題発見力を育てながら、同時に豊富な制作ネタを用意しておく。この両輪で新しい時代の教育を設計していく必要があります。

技術の進歩に合わせて教育も進化させていく。その過程で直面する課題こそが、次の教育改善のヒントになるのかもしれません。

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